三ヶ月坊主

個人的嗜好をSexyと戦わせるゆるオタク

『ザ・ハイライト』全曲感想

 Sexy Zoneポニーキャニオン在籍時アルバム後期三部作(と勝手に私が呼んでいる)『XYZ=Repainting』(2018年)『PAGES』(2019年)『POP×STEP!?』(2020年)のコンセプトと精神性をまとめて一枚のアルバムに仕立てて殴り込んできたなTOP J Records!とものすごくワクワクするのが、今回の新アルバム『ザ・ハイライト』だ。
 『XYZ=Repainting』の自分たちの可能性を刷新しようとする意気込みは、今回のジャケットやMVを始めとするアートワークにメンバーがとことんこだわっている所に繋がっているし、今回の「人生のハイライトをお送りする」というコンセプトは言わずもがな『PAGES』の「人生の1ページを切り取る」というコンセプトの昇華だし、『POP×STEP!?』で見せた一つのアルバムとしての曲の繋がりのうねり・一つ一つの楽曲クオリティの追求姿勢はそのまま引き継がれている。
 だから今回この『ザ・ハイライト』で初めてSexy Zoneに触れた人はそのまま過去作にも手を伸ばしてみてほしいし、過去に上記アルバムたちが好きだった人はぜひ『ザ・ハイライト』で最高になってほしい。

 という事で一曲ごとの感想いきます!


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1.Forever Gold(リード曲)


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 80年代の洋楽っぽい音をふんだんに使ったリード曲で、青春の輝きをぎゅっと詰め込んだようなタイムカプセル感が本当に大好きな楽曲。2番の歌詞でこれまでのSexy Zoneの歩みを懐かしんで振り返っているような感覚に襲われた人は多いだろう。
 青春を振り返る曲は切なくなりがち(というか私がそういうの好きがち)だが、現在がこれだけ煌めいていれば、同じ「振り返り」でも決して湿っぽくならずに空に抜けるような爽快感が出るんだな!というのが新たな発見だった。夏の空!蒸せ返る熱気!ではあるけど湿気りすぎない気候!
 解禁時から歌詞に「振り返るハイライト」と直球タイトルロールがクレジットされているのが話題を呼んでいたが、このワードがある事でこのアルバムのコンセプトが更に強調され、まるでこの曲がアルバム全体の序曲であるかのような効果を生んでいる、と思う。オペラとかだと序曲は「これからこんな物語が展開しますよ」というのをご案内する役割を持っていて、本編の曲たちの要素(フレーズとか)をそれぞれ含んでいたりする*1ものだが、このForever Goldは「これからの曲たちで、ある人生のハイライトを振り返っていくんですよ」というのを教えてくれる。

 アルバムを聴き終わった後にForever Goldに戻ると、「振り返るハイライト」の歌詞を聴くたびにアルバム収録曲が走馬灯のように脳裏を駆け巡るようになるんでオススメです。

 

2.Desideria

 Forever Goldが賑やかに音数多め(シンセの密度濃いめ?)で進んだ分、Desideriaのイントロで一気に音数が減り余白が増え、何何?何が始まるんだ?とぐっとこちらを引き込んでくる。あと多分、本当に多分だけどForever Goldの一番最後の音とDesideriaの一番最初の音は同じ音だと思う。自信ないけど。Forever Goldを序曲とすると、このDesideriaからアルバム本編がスタートする事になるのだが、全く違うジャンルで引き込ませつつ繋がりを失わないように、同じ音繋ぎにしてるのかな〜と推測する。
 音やメロディ運びに和要素がまぶされていて、疾走感に良いスパイスを加えていると思う。あと高音ボーカルが目立つので清涼感がすごい。この曲は絶対80年代ではないのだが、じゃあどの年代か?と聞かれると私は答えに迷ってしまう。実際色々な人の感想を見てもわりとこの曲は意見が割れているように思う。個人的にはこれ絶対クロスビーツ*2でプレイした事あるわという感じ。音ゲーに全く詳しくないのでアレだが、音ゲー収録曲って色んな時代・ジャンルの要素をごちゃ混ぜにしているイメージがあるので、Desideriaも多分そういう事なんじゃないかな。

 

3.THE FINEST(リード曲)


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 Desideriaが終わると急にベースが骨太になって、めちゃくちゃ現代なようなものすごい80年代なようなTHE FINESTが始まる流れがすごい好き。Desideriaの後だと余計に生楽器のベースが骨太に聴こえる気がする。
 MVの印象に引きずられている気がするが、相手が輝く(=ハイライト?)お手伝いを散々したくせにいざ他にかっさらわれそうになったら焦る男……という印象を受ける歌詞。焦り方が世界一オシャレ。でも「You should love me like a partner」なので実際にはパートナーじゃない……?「主人公は洋服とか装い全般の擬人化」説も未だ濃厚かもしれない。

 

4.夏のハイドレンジア(シングル曲)


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 アルバムのコンセプトが発表された段階では、えっ……思いっきり現代のJ-POPですがこの子は大丈夫でしょうか……確かに夏は夏ですが梅雨ですし……本当にこの子は戦えますか……?と心配になっていましたが、ごめん全然杞憂だった。

 この曲の一番最初の音、個人的には耳鳴り(=アニメとかでよく「何かを思い出そうとするけど思い出せない」描写で出てくる)の音みたいだなあと発売当時思ったものですが、Forever Gold〜THE FINESTのノスタルジックな流れの後に聴くとますますそんな感じがする気がする。
 去年のドラマの主題歌としてリリースされて、この曲とずっと一緒に過ごした去年の夏、それも私たちのハイライトの一つなのだ。

 

5.Iris

 結婚式で絶対に聴いた。新郎新婦お色直しで再入場してくる時、サビ直前に「それでは、新郎新婦入場です!」のアナウンスが入り間髪入れずドアが開き「他の誰でもなかった♪まさかね でも、君だったんだ♪」が流れ始めるこの完璧な流れ、今すぐできる。結婚式司会のバイトをした事があるような気すらしてきた。夏のハイドレンジアの次なのもいいよね。「晴れ渡るフィナーレ」がIrisなのでは!?!?!?!自分司会やれます!やらせてください!
 キュートさと韻の心地よさのハイブリッドを味わえるアイドルラップが本当に大好きなんだけど、このIrisではまさにその醍醐味がすごい。最初にレコードに針を落とすようなアナログな音とカセットテープ越しのような音声、最後の咳払いと照れ笑い、その点すげ~よなIrisは 最初から最後までチョコたっぷりだもんな

 

6.SUMMER FEVER

 聴くタイプのシーブリーズ。サビ前のYeah this is SUMMER FEVERを聡ちゃんパートにした人には今生で最高の幸福が降り注いでほしい。聡ちゃんの透明感あるボーカルが夏との親和性グンバツなのはとっくにMermaidで証明済、オタクにとって「音が消えて聡ちゃんの声だけになる」=夏を表すライトモチーフであって……(ろくろ)
 「溶け合って Midnight(みない?)」「熱くったって In the night(いいんじゃない?)」といったダブルミーニングというかダジャレというかが逆に80年代を感じさせる、明るく爽やかEDM。分かりやすくノれる。腰に蝶のタトゥーとかしてそう。めっちゃローライズのジーパン履いてチラ見せしてきそう。ガラケーにファーのストラップ付けてそう。曲を擬人化すんな。

 

7.Story

 SUMMER FEVERでひとしきりはしゃいでいる間に気付いたら日は暮れ、人がいなくなった海辺に打ち寄せる波の音で始まるStory。夜の静寂に満ちる温かな幸福感が胸を締め付ける、まさにザ・ハイライトな一曲なわけですが、何でだろうこの曲を聴くと辛い気持ちになるのは……だって今のこの幸せが絶頂であればあるほど……失った時の喪失感は大きいわけで……(2個目の茶碗を作る)
 だって失う予感しかしないのだ。波は寄せては消えるから波なのだ。「終わらないで」「ただただ消えない様に」「奇跡を願う様に」と重ねるごとに、きっとこの人は永遠などない事を分かっていながら尚永遠を願っているのだろうと思ってしまう。そういうの大好きだ……(瀕死のハンス)

 歌詞を見ずになんとなく聴くだけで、満天の星空や打ち上がる花火、それを見上げる二人が目に浮かぶような曲調だな…と思っていたら歌詞でもそれらが綴られていて、音楽の描写力ってすごいなと改めて感じた。サビ冒頭のフレーズ「真夏の夜のStory」は「真夏の夜の夢」とかけているのだろうか*3。だとすると、Story=夢=Dreamという事になって夏の大しんど三角形をQ.E.D.してしまいますが……(瀕死のハンス二体目)

 

8.Eliminator

 ここでパキリと曲調が切り替わり、アルバムが新たな局面に突入した事を印象付ける。Forever Gold→Desideriaでの切り替わりを再演している感じ。曲単体だとDesideriaとEliminatorではだいぶ音の重さが違う感じで全くの別物なのも面白い。アルバム真ん中~後半にかけて風刺的(以下の提供者ツイートからも、結構な思いがこもっている事が分かる)な歌詞のバキバキ曲を挟むという、『PAGES』『POP×STEP!?』から続く様式美をしっかり引き継いでいる。
 楽曲自体は言ってしまえばよくあるダンサブル楽曲なんだけど、結局こういうの好きなんだよ。普遍的にカッコいい。中学2年生の私が鳴り響く警告音に大はしゃぎしている。オタクは全員KEEP OUTテープが好きと相場が決まっているんです。

9.Freak your body

 Eliminatorとのコンビネーションが完璧で、否応にも上げられたテンションと拳をそのままぶつけられるセクシーEDM。毎回「We makin' love」で音サビに入るのが最高。この盛り上がりこそが僕なりの愛ってか。しっかりフォーウ!みたいな昔っぽい音(伝われ)でレトロ感も担保しているのがニクい。

 健人くんの「もっと欲しい?」が声の跳ね上げ方表情の付け方などなど本当にfooooすぎる。語彙力の敗北である。全体的にこれまでのSexy Zone楽曲にはなかった直球エロタイプの歌詞で、勝利くんパートの「後ろから~」のとこなんか歌詞を読むとまじでウォウウォウなんですけど、ここの勝利くんの歌声が本当に絶妙にキュートでそっちの意味で悶絶する。天才か?

 

10.休みの日くらい休ませて

 ここにきて異色の楽曲、岡崎体育の提供曲である。Eliminator~Freak your bodyでゴリゴリに攻め込んだ後に、これまでSexy Zone楽曲にほぼ無かったコミックソング*4チックなこちら。Freak your bodyとはそういう「これまでになかった要素」という点での繋がりはあるかもしれない。曲調的にもしっかりしたバンドサウンドで、EDM攻めでぶち上がっている間に知らず知らず疲弊し始めた耳に心地よい。

 菊池風磨さんの作るコンサートには高確率で幕間、箸休めのおふざけパートが入るが、その要素をアルバム中で再現しようとしたのがこの楽曲この位置なのだろうなと感じる。この『ザ・ハイライト』という作品は、ダイジェスト動画(この記事最初のYoutubeリンク)でも明らかなように、おおよそ昼~夜への時系列に沿った順で並んでいる。夜の曲の比率がやや高いのがSexy Zoneらしさ。その中で、この休みの日くらい休ませては明らかに浮いた位置にいる。明らかに夜を意識したFreak your bodyの後なのに「静かな午前の家の中」と来たもんだ。このズレによって、この曲がアルバムの本筋から離れたスピンオフ的な性格を持っているように感じられて、私はこの曲順大好きです。

 

11.LET'S MUSIC(シングル曲)


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 題名の影響もそうだし、去年のSZ10THの印象も強すぎて、この曲は開幕以外どこにどうやって入れ込むんだ!?!?!?とソワソワしていましたがごめん全然杞2回目のため省略。幕間たる休みの日くらい休ませてを挟んで、この後に控えるアルバム中最高最後のドラマチックパートにつなげるナイスすぎる橋渡し、レツミュをここの位置に決めた人決めた瞬間絶対めちゃくちゃ脳汁出た。曲調も、そもそもこの曲がなければ今回のコンセプトはなかったのでは?と思わせるほど何の違和感もなくハマっている。

 音楽しようぜ、と改めて終盤を手前にしたここで楽しく高らかに宣言して、『ザ・ハイライト』というアルバムは終息に向かっていく。

 

12.Summer Ride

 真夏の夜の空気感と湿気を閉じ込めたような音が響く楽曲。1番のサビで「あの日の海まで 君を連れていけるよ」と出てくるところで、これまで振り返ってきた数々のハイライトのいくつかが走馬灯のように浮かぶ。どの海だろうね。Desideriaで「波打つMidnight」って言っていたところかな。SUMMER FEVERで飛び跳ねてたビーチかな。Storyで寄せては返していた波かな。Freak your bodyで部屋が軋んでたのはまさか海沿いの寂れたやっすいラブとにかく走馬灯。Cメロの健人くんパート「思い出は 闇の中で 光る星さ」は、Forever Goldのあの「振り返るハイライト」「Beautiful Times Beautiful Lights」と同じ動機なのに、あまりにもその響き方が違う。

 「追いかけよう 間に合うならば」「僕の口から伝わってほしかったよ」ととにかくI wish I had 過去分詞*5な文が続くが、一貫して「君が好きさ」だけはずっと、何があっても現在形なのである。その気持ちをなんでもっと早く……行けよ……こんな場所(ところ)俺がどうにかしておくからさ……行けよ……!って親友役の私が言ってる。

 落ちサビ直前のあの息を吸い込むような空白の瞬間に、どれほどの光景が脳裏をよぎる事か。

 

13.Dream

 Dメロ以下略*6。このアルバムの抒情性の頂点がここで築かれる。『PAGES』におけるiri提供曲のmake me brightを以前「泣き疲れた後に観る夢のような曲」と表現した事があるが*7、まさかド直球で【Dream】と来るとは……

 iriからの歌い方のアドバイスが結構残されていた、とのメンバー談だったが、それがめちゃくちゃめちゃくちゃめちゃくちゃ効果的でたまげた。声の綺麗さはそのままに、少し乾いた声音と湿気を含んだ表情、という相反する色が乗っている。特にしょりそうの声を乾かしたのは本当に偉大すぎる功績。合いすぎる。1番のサビではすっと通り抜けるようなベースラインが、2番のサビ後半で感情の昂ぶりに合わせて動き始めるところとか、楽曲自体のドラマチック性もすごい。

 そして問題のDメロ略は本当にふまけん二元論を感じさせた。ふまけん二元論とは、「万物は『どちらかというと健人くんっぽい』『どちらかというと風磨くんっぽい』に分類する事ができる」という暴論である。このブログを始めたばかりの時、ふまけんに限らずとにかくメンバーにこんな曲歌ってほしいこういうの似合いそう、と個人の偏見と性癖を抽出して暴走した記事をたくさん書いていたが、当のふまけん本人からこんなでっかい【永遠】と【刹那】を手渡されると戸惑ってしまう。Dメロの健人くんパートで永遠を夢見た後に(なお健人くんの歌い方から、おそらくその永遠は叶わない事をこの曲の主人公は分かっていると思われる)、落ちサビの風磨くんパートを聴くとありとあらゆる感情が溢れ出してしまう。これが逆の順序ならこうはいかない。逆ならいわゆるハッピーエンドで救いがあるかもしれないけど、救いとかじゃねえから……

 

14.Ringa Ringa Ring

 Dreamで築かれた感情の頂点から、さあどうやって降りてこよう……と途方に暮れているところに颯爽と登場する懐かしい香りのブラス音と女声コーラス。ブラウン管の向こうから聴こえてくるあの頃の音楽から始まったアルバムは、同じようにあの頃の音楽に乗せてブラウン管の向こうに帰っていく。あまりにも綺麗な構成。Forever Goldが序曲なら、Ringa Ringa Ringがカーテンコール。

 この曲を「一番僕ららしいと思ってもらえると思う」とメンバーが評しているのに震える。かわいらしさと上品さと小粋さとノスタルジーと少しの切なさを混ぜて固めて出来上がったこのポップが、結局Sexy Zoneの軸なのだと、一番本人たちが自覚的なのだ。この曲を聴き終わって心地よい余韻に包まれる瞬間が、アルバムを通して聴いた者にだけ与えられる最高のご褒美だろう。

 

 そして次にこのアルバムを再生した時には、Forever Goldで歌われる「振り返るハイライト」が、最初に聴いた時とは段違いの実像を伴って目の前に現れるのだ。

 

 

 

 

*1:オタクに一番分かりやすい直近の例でいくと、SHOCKの最初の生オケとかまさにそう。あれはどちらかというと序曲というよりシンプルに劇中楽曲のメドレーですが、役割としては同じ。

*2:CAPCOMが以前リリースしていたスマホ音ゲー逆転裁判のBGMリミックスに釣られて一時期プレイしてました。

*3:作品内容的には全然違いそうなので、あくまでワードとして。

*4:トンチキとは似て非なるもの。

*5:先日スペースでこの話をした際、全然出てこなくて義務教育の敗北を感じた。これでも高校生に大学受験の英語を教えていた事があります。日本はもう終わりだよ。日本を巻き込むなお前がクソなだけ

*6:ご存じない方のために全文載せておくと、「Dメロ中島からの落ちサビ菊池」。風磨くんがラジオでのDream初解禁時、まだ解禁されていないそこの箇所が最も聴きごたえがあると自賛した時の台詞。

*7:何で書いたっけ?と思って探したらちゃんと記事にはしておらず、ポプステの曲の繋ぎについての感想文の注釈で触れていただけだった。このアルバムこの繋ぎが、好きだよ〜〜選手権 POP×STEP!?編 - 三ヶ月坊主