三ヶ月坊主

個人的嗜好をSexyと戦わせるゆるオタク

『ChapterⅡ』と前作『ザ・ハイライト』との比較

 昨年末のドームコンサートでの勝利くんの言葉を借りるならまさに「新章、幕開け」といった意気込みを感じさせるタイトルである、新アルバム『ChapterⅡ』。その内容を、がっつり前作『ザ・ハイライト』の流れを踏襲したものにしてきた事に、これまでやってきた第一章への自信と誠実さを感じさせられる、そんなアルバムであるように思う。*1

 ツアーのパンフレットや各種インタビュー*2でメンバーが「『ChapterⅡはザ・ハイライトの夜版、続編」といった趣旨の発言をしているが、まさにその表現がぴったり。"80〜90年代意識"と"夏の香り"がアルバムを貫く軸だったザ・ハイライトと比較すると、ChapterⅡは"90〜00年代(一部10年代?)意識"と"夜の香り"がChapterⅡの軸であるように思う。楽曲の細部はもちろん違う部分も多いが、ざっくりいうと「昭和と夏」「平成と夜」みたいな…………

 そこで今回は、全曲の感想以外にも、ザ・ハイライトとの比較についても感想を残しておこうと思う。よろしくお願いします。

 

前作『ザ・ハイライト』の感想↓

 

◾️時間帯問題

 前述の「ザ・ハイライトは昼、ChapterⅡは夜」というのはだいたいは合っているが微妙に違うかもしれない。というのも、上で挙げたそれぞれのダイジェスト動画では、背景映像のイラストによってかなりはっきりと時間帯イメージの描写がなされている。

 ChapterⅡダイジェスト動画背景の変遷をまとめると、以下のようになる。

・M01.Cream〜M05.BUMP→サーチライト

・M06.泡〜M08.Take A New Step→流れ星

・M09.Make You Mine〜M12.再会の合図→ちょっと暗くなって雨

・M13.長電話→雨が上がる

・M14.せめて夢の中〜→空が明るくなっていく

 一方、ザ・ハイライトダイジェスト動画は以下のように変遷する。

・M01.Forever Gold〜M05.Iris→昼(Iris後半で夕焼けが始まる)

・M06.SUMMER FEVER→夕焼け(終わる頃に完全に日が沈む)

・M07.Story〜M10.休みの日くらい休ませて→夜(明かりがつく)

・M11.LET'S MUSIC〜M14.Ringa Ringa Ring→夜(看板のネオンが光る)

 この二つの映像を比較した時、ザ・ハイライトの終盤の夜の空の色よりもChapterⅡのそれの方が、最初のCreamの時点からかなり明るい水色に感じられる。例えば0時前後の夜にしては、ちょっと明るい。もちろん絵自体もタッチも配色も違うので純粋には比較できないが、これを見る限り「ザ・ハイライトは昼〜夕方〜夜中」「ChapterⅡは深夜(イメージ3時ぐらい?)〜夜明け」イメージなのではないか?という想像がされる。その場合、やっぱりChapterⅡはザ・ハイライトの時間軸の続き、延長線上にあるのだと思えて、非常に楽しい。

 または、ChapterⅡの空色が明るいのは時間帯によるものではなく、都会のネオンに照らされているからでは?という想像もできる。その場合、周囲に何もなさそうなガレージだったザ・ハイライトよりも、より「都会性」を強調する意図があったのかもな……と考えられて、楽しい。結論、楽しい。

 

◾️曲順について

 これに関しては、前作ザ・ハイライトがめちゃくちゃ分かりやすく、前後の曲調の繋がりがスムーズな箇所が多くてこちらの感情コントロールが抜群に上手かったので、今回もその路線で来るのかな〜と思っていた。

 聴いてみると、今回ももちろん巧みな曲順の箇所も多いが、それよりもどちらかというと飽きさせなさ・目まぐるしさのほうを重視したのかな、という感想になった。今回は「東京の夜に繰り出す」というテーマがあったり*3、楽曲の年代幅も前作より広がったりで、雑多さを敢えて強調する構成にしているのかな〜と思う。

 全体構成の思想としては、ザ・ハイライトとChapterⅡは共通している箇所もありそうに思う。これまで(ザハより前)の構成なら、なんとなくMessageは中盤には来ないような気がする。再会の合図前あたりか長電話の後に置きそう。そこを敢えて外して、中盤で前半の締めくくりとして置いてきている感。ザ・ハイライトでも同じ7曲目のStoryで前半の感情盛り上がりポイントを作ってきている。ここでは仮に、前半7曲・後半7曲に分けてそれぞれの比較をしてみる。

 

◾️前半7曲について

 前半7曲は、ザ・ハイライトとChapterⅡいずれもアルバムの世界観固めをしにいっているように感じる。ザ・ハイライトではタイトルや歌詞に直接的に"夏"の単語を含む曲を多く盛り込み、リード曲2曲も惜しみなく投入。一方のChapterⅡも、それぞれ異なる夜の香りがする曲を並べて「(雑多な)東京の夜の街に繰り出す」感をこれでもかと押し出す。夜の万華鏡や〜(?)

 最も異なるのは始まり方だろう。リード曲Forever Goldから始まってアルバムコンセプトをいきなりガンとぶつけてくるザ・ハイライトに対して、ChapterⅡは最新シングル曲であるCreamから始まる。CreamはもちろんOPにも相応しい華やかさを持っている曲ではあるのだが、今回のアルバムの為だけに作られた曲ではない*4。アルバムの世界観を聴き手に飲み込ませるには不向きと言える。実際、これまでのSexy Zoneのアルバムは全てアルバムリード曲から始まっており、*5シングル曲から始まったアルバムは今作が初めてである。

 ではなぜそんな始まり方にしたのか。やはり、「ChapterⅡはザ・ハイライトの地続きの続編である」という意識が大きいのではないだろうか。もう今更アルバム世界観の説明とか必要ないよね?着いてこい、今回初めて聴く人は最新シングルのCreamから入るからそのまま着いてきてね、といった自負をなんとなく感じ取った。これはまじで私の感じ取りなのでなんの責任も持てませんが……

 そして前半締めくくりの曲とそれぞれで仮定した、Storyと Messageについて。どちらも感情の盛り上がる曲である事は確かだが、盛り上がり方はかなり異なるように思える。波の音から静かに始まり、歌詞通り「真夏の夜のStory」夏と恋の話であるStoryは、静かな幸福感と僅かな切なさをもたらすバラード曲。一方のMessageは、90年代アニメED感漂う正統派応援ソングであり、Sexy Zone自身の姿とも重なる歌詞にポジティブな感情が湧き上がってくる。この"感情の湧き上がり方"がそのままザ・ハイライトとChapterⅡを通して聴いた際の読後感ならぬ聴後感の違いに繋がってくるような気がする。

(ちなみにMessageの作詞を担当したHIKARI氏のツイートが以下。圧倒的現実。)

 

◾️後半7曲について

 後半7曲に関しては、途中まではかなりザ・ハイライトとChapterⅡで同じ「2曲単位で曲をまとめる」構成になっているように感じる。ザ・ハイライトは最後までこの構成で突き進む。電子音の目立つダンサブルなペアEliminator・Freak your body、音楽のハッピー感で繋がる休休・レツミュ、圧倒的な夏のエモSummer Ride・Dream、最後に夢のようにレトロな楽曲に回帰するリガリガ、といった具合に。

 ChapterⅡも、時代感こそ異なるが洒落たサウンドで恋愛を歌うダンサブル楽曲Take A New Step・Make You Mine、シリアスでドラマチックな曲調のSad World・トラトラあたりまではペアが成立しているように思われる。また最後の楽曲がまたまた夢のようにレトロな…というか今回は私の感想とかじゃなくガチで「夢の中」て言ってる…せめて夢の中〜なのも共通している。*6

 唯一相違しているのが、再会の合図・長電話のペア。ここ、曲調的には真反対と言っていい。歌詞のテーマ的には前者が友情、後者が家族の「継続する絆」を歌っているので全然余裕で繋がりあるのだが、さすがに曲調が違いすぎてペア感はあまりない。私は前作のSummer Rideからラストまでの流れがめちゃくちゃ好きなので、前作と同じような聴後感を求めるなら再会の合図か長電話の後にもう一曲しっとりした曲が欲しかった気持ちもある(前作と同じ感覚で聴いているとまだしっとりポイントが溜まりきっていないので、せめて夢の中で〜でラストな感じがあまりしない気がする)が、この違いこそがChapterⅡがザ・ハイライトの続編でありながらも決定的に異なるポイントとして作用しているような気もする。

 

 Storyのような切なさを孕んだ盛り上がりではなくMessageの現実を高らかに鼓舞する盛り上がりを選び、夏のエモーショナルな一瞬の切り取りではなく変わらぬ繋がりを描く事を選んだChapterⅡ。地続きの続編でありながら、ただの焼き直し・ただの夜版にはしなかったSexy Zoneの意地を、曲順からでもなんとなく感じ取ることができました。

 

 

そしてここまでお読みいただき大変申し訳ないのですが、ここまではあくまで『ChapterⅡ』全曲感想の前段として書くつもりだったのに、盛り上がってしまいちょっと長くなってしまいました。

なので全曲感想は後編にします!今回ソロ曲もあるし!忙しい!!!

 

2023/06/09後編書きました↓

*1:実際、そんなような事をパンフでメンバーも答えている。パンフの内容なので詳細は伏せます。

*2:「mg」2023年5月号や、「anan」2023年6月14日号など

*3:初出は多分YouTubeの『Purple Rain』MV紹介文のあたりだったと思う。その後もパンフとかで明言されている。

*4:アルバム収録曲として作られて先行シングルカットされる…という例ももちろん世間にはあるが、Creamの場合はドラマ挿入歌として書き下ろされた事が明言されているので該当しない。

*5:イントロを除いた場合。また、1stアルバム『one Sexy Zone』は明確なリード曲の想定がなさそうだが、新曲『完全マイウェイ』で始まっている。

*6:今作はサウンド的にもレトロ感はほぼない、というか作中一番今っぽい音をしている気がするCreamから始まるので、ザハみたいに「アルバムの最後で最初の曲と同じ時代感に帰る」という効果はあんまりない?……と一瞬思ったが、今回せめて夢の中で〜で回帰する先はCreamじゃなくてForever Goldなのかも……ザ・ハイライトとChapterⅡを連続して通して聴いてみたい。