三ヶ月坊主

個人的嗜好をSexyと戦わせるゆるオタク

このアルバムこの繋ぎが、好きだよ〜〜選手権 POP×STEP!?編

 アルバムってやっぱり"通して聴く"事を前提として作られてるパッケージじゃないですか。

 と始まると、「シャッフル再生じゃ得られない通して聴く事の良さが云々〜最近のサブスクは云々〜」ってシャッフル再生を下げる論調になりがちだが、それもうサブスクとかの最近の話じゃなくてシャッフル再生が実装されたipodウォークマンが主流になった頃から使い古されてて何を今更感すごいし、多分レコードからCDになって曲単位で再生できるようになった頃から「最近の若いもんは曲を飛ばしよる」的に言われ始めてるだろうし、そのレコードが出来た時も「生演奏こそ音楽、瞬間を切り取って保存しようなんて芸術が廃る」的な事を言われただろうし、西洋音楽に限ってしまえばオーケストラの生演奏が我々のような一般市民にも公開されるようになった頃それまで生演奏を独占していたお貴族様たちは多分ブチ切れしていたであろうから、私は極力シャッフル再生を極度に下げるなどの現状否定的な言説は無視する事にしている。時代は回るし、流れというものはあるし、CCCDは全く定着しなかった。どういう形態をとろうが音楽というものがこの世からなくなる事はないよね。多分。

 そういった思想から来る、シャッフル再生いいよね今の時代の聴き方だよね、という私の態度と、「アルバムという形態はそもそもは通して聴く事を前提に作られている」という話は別に矛盾しない。アルバムをシャッフルで聴いたっていい。今時作り手だってシャッフルでも聴かれるだろうと想像しながら各曲を作っているだろう。私だってSexy Zoneの現時点で最新アルバム『POP×STEP!?』をシャッフルで聴く。めちゃくちゃ聴く。だから、以下で語るのは、あくまでこのアルバムを作った人たち(=Sexy Zone)のおすすめ順に従って聴いてみたらどうなるのか、を頑張って言語化したものである。

 

1.(無音)〜極東DANCE

 無音とかそもそも曲じゃないやんけ、と言うことなかれ。無音も音楽だから。休符は『"音がない"という音』なのだ(訳:なので休符だからって思いっきりサボるなバカモン)…って昔指揮者の先生が言ってた気がする。なにもない状態からアルバムの世界を創り出すには相当なパワーが必要で、パワーがあればあるほど聴き手はこのアルバム『POP×STEP!?』の世界に強く突き落とされる。アルバムの評価は最初の数曲でだいぶ左右されるだろうなあ、と私は思っている。

 だからこの『極東DANCE』の、めちゃめちゃパワフルなギターから始まるイントロのパワーが本当にパワーが強くて最高なわけ。何回パワー言うんだ。リード曲から始まるアルバムは名作の法則。

 

2.極東DANCE〜恋のモード

 全っ然、全っ然違う方向性なのにポップの威力が同じ〜〜!!!黒!赤!ネオン!からのピンク!甘!kawaii!のハッとするような転換が最高。こんなんゴスロリからのクラロリじゃん。(?)

 とにかく聴き手はここで「あっ、このアルバムすっげ〜ポップなやつだ」という小学生みたいな感想とともにアルバムのコンセプトを理解する事になるのだ。

 

3.恋のモード〜禁断の果実

 パフェでお腹いっぱいの人間にニンニクマシマシペペロンチーノを食わすな

 美味しいと美味しいで更に美味しいからもうムチャクチャ。普通こんなに立て続けにポップを食ったら死ぬ。でも前述の通り、既に聴き手は「あっ、このアルバムマジで超すっげ〜ポップなやつだ」となっているので何とか耐えられるってワケ。前振りって大事だね。

 

4.禁断の果実〜Honey Honey〜タイムトラベル

 イタリアン繋ぎ(イタリアン繋ぎ?)でもう聴き手はだいぶ酔っ払ってるんですが、酔いを利用してワンチャンを狙いにいくな。ジゴロ→伊達男→同窓会再開浮気男の必殺コンボ三連が見事キマりました。

 まず禁断の果実の次がハニハニって、もう字面からして甘すぎるだろう。糖尿病まっしぐらか。ハニハニで一通り糖分を摂取した後にちょっとスパイシーなシティポップのイントロが聴こえてきちゃうから無限に食えてしまう。ここの畳み掛けがアルバム前半のハイライトの一つじゃないかな。多分。

 

5.タイムトラベル〜Blessed

 夜が更けてからのBlessedはずるいて〜〜

 直前まで散々華やかな曲で盛り上がり、い、いくら無限だからと言ってこれ以上ポップを食ったらマジで死ぬ…私いったいどうなっちゃうの〜!?と最高潮に盛り上がるタイムトラベルのアウトロから、一気に、本当に一気に音数が減るBlessedのイントロ。トランペット「ブルァ〜〜」→ヴァイオリン(?)*1のフレーズ。空虚さが身につまされるし、だからこそBlessedの"救い"が身に染みる…

 

6.Blessed〜BLUE MOMENT

  Blessedで越した夜が明けるようなイントロの音ですよ。少しの切なさは残しながら、明るい雰囲気になる中盤からの流れ(ダヴィンチはやや例外として)への上手い橋渡しになっていて、今更だけど曲順が上手すぎる。

 

7.ダヴィンチ〜まっすぐのススメ!

 ここは、曲のテーマ性とかは置いといて、なんかやたら繋ぎがしっくりくるな〜と思ってたけど、最後と最初のコードがもしかして一緒?一緒じゃなかったらごめん。コードトラッカー*2に文句言ってください。

↓こうなってました。1枚目ダヴィンチのラスト、2枚目まっすぐのススメ!の冒頭 どちらも(ドラムのみでNo Chordの箇所除き)Gで終わりGで始まる

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 疾走感あるダヴィンチがベースとギターでジャーン…と余韻を残して終わったかと思いきや、少しゆっくりになったドラムの刻み(?)が始まり、同じコードのギターのリフが始まる…という、すごい綺麗な形になっていると思う。同じギターメインのバンドサウンドでも、全然テンポ・メロディー・歌詞の方向性が違う二曲だけど、ここを並べるのはシンプルにセンスが良い……

 

8.Tokyo Hipster〜MELODY

 サウンド的にも歌詞的にも、壮大なスケールで東京を俯瞰(途中汗にクローズアップするけど)して、あたかも東京の上空を空中散歩したかのような浮遊感を感じさせるTokyo Hipster(個人の感想です)。そこから渋谷をはじめとする実際の東京の街で過ごすメンバー達の姿が印象的なMVのMELODYに繋げるのはずるすぎる。最初にこの並びを聴いた時の、東京の空から渋谷に着地したような感覚が今でも忘れられない。

 もちろんこの感想はMVありきなので、もう正規の手段でMELODYのMVが手に入らない現状(2021年1月現在)、これから新たにポプステを聴く人とは完璧に共有するのが難しいかもしれない。でもサウンド的にも、ハープまでふんだんに使って全楽器で同じ音(多分)を鳴らす壮大なラスト→電子音がかったピアノ一台の和音、っていうコントラストがそれを表現してる気がして…好き…

 極東DANCEとここの繋ぎが、ポプステの「様々なポップソングを『Sexy Zone』というフィルターを通して東京から発信する!」というコンセプトのうちの"東京"要素を全身に担ってるのだと思う。この繋ぎがあるから、この『POP×STEP!?』というアルバムは実在する都市・東京のポップチャートとして成立している…

 

9.One Ability〜それでいいよ〜麒麟の子〜HIKARI〜(無音)

 冒頭でも書いたがアルバムってものは序盤数曲が一番大事、そこで世界観や魅力を余すことなく見せつけてガッと聴き手をアルバムに引き込んでしまえば、あとは「こんな事もできますよ」と違う面を見せて飽きさせないようにさえすれば聴き手はだいたい満足するんだよ(個人の感想です) !ここまで感情の流れをコントロールしなくていいんだよ!本気か!

 ワンアビで一回曇らせて泣かせてくぐもった音のアウトロで終わらせておいて、泣き疲れてからの『それでいいよ』で包み込む感じ…泣いた後のぼうっとした頭に染み込む温もり…この手口、お主さてはPAGES*3で味を占めたな?Blessed→BLUE MOMENTでも似たような味わいがあったけど更にガチガチにやりおった。

 少しずつ心を癒やして、よし立ち直れそう…と前を向いて終わるような、優しく爽やかなアウトロ。そこから「立ち上がれよ早く早く」と背中を押してくる麒麟の子はだから本当ずるいんだって。ただ優しく私を肯定するだけじゃなくて、より良い私になるために支えてくれるのがSexy Zoneじゃん(少なくとも私にとっては)。それでいいよで包み込んだ後、自分が雨に打たれてでも隣に立ってくれる麒麟の子という流れが、彼らの本質を表しているような気が勝手にして、本当に好きです。

 そして電子音沸き立つイントロのHIKARIでエンドロール。麒麟の子はドラマ・映画『ブラック校則』の主題歌で、エンディングテーマとしての役割・印象が強い楽曲だったから、麒麟の子でアルバムを終わらせるのもアリだったと思うのよ。でもそうしなかった。麒麟の子で立ち上がった私をスタートラインに導くよう。そして最後、"Are you ready?"で踏み出した瞬間そこはもう無音なのだ。完璧な終わりだと思う。

*1:私はヴァイオリンとヴィオラの音の聴き分けが出来ませ〜〜ん

*2:YAMAHAのアプリ。曲を読み込むとコードを自動的に判定してくれる。

*3:今度PAGES編を書きたいので詳細は控えますが、CRY→make me brightの繋ぎの事です。